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看護学生のセツルメント活動—ルポルタージュ
平野 順治
1
1編集部
pp.42-44
発行日 1961年9月15日
Published Date 1961/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911473
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I.暗い谷間に灯をともすもの
さいきん看護学生の間でセツルメントの活動が盛んであるという。医学部の学生や看護学生がその特技をいかして,貧しい人びとに愛の手をさしのべ,自らもまた閉ざされた社会のワクを破つて実社会の息吹きにふれようと,若々しい情熱を燃やしているセツルメントの活動—その実情をさぐるため,記者は一日,東京都新宿区若葉町3丁目にある若葉セツルメントの診療所を訪ねてみた。
ここは円地文子の小説「愛情の系譜」にも取り上げられたところ,国電の信濃町駅をおりて,池田首相の邸宅にそつた坂道を約10分ほど四ツ谷方面にくだつた,いわゆる都会の暗い谷間である。左右の高台にたちならぶ高級住宅にはさまれて,小さな家々がゴタゴタと身をすり寄せるようにかたまつている。若葉セツルメントは,この谷間の貧しい300世帯の人びとを対象に,1955年,慶応義塾大学の医学部の学生と厚生女子学院の看護学生とが中心に行なつた,ささやかな医療活動にその端を発している。現在では「平和,民主主義,生活向上のため,国民的結集をはかる一つの力になろう」というスローガンの下に,次のような地域活動を行なつているが,まさに暗い谷間の生活に灯をともすものといえよう。
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