特集 病人の心への接近
精神分裂病者の個別的受容について—粗暴行為を繰り返す一分裂病少女への接近を通して
酒井 千知
1
,
伊藤 シズ子
1
,
青木 萩子
1
1国立療養所東尾張病院2—下病棟
pp.696-702
発行日 1977年7月1日
Published Date 1977/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918191
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はじめに
‘患者中心の看護’の重要性が叫ばれるようになって久しい.むろん精神科領域においても,より良い看護を目指して,とりわけ看護の技術は多くの場で論議され,実践されてきた.とはいっても,精神に障害のある患者の看護には,身体に障害のある患者のそれに比べ,はるかに定式化された技術は少ない.精神科看護における技術の定式化の難しさは,精神医療の特殊性によって,すなわちそれはそのまま人間の精神に結びつく未知性,不可解さ,あるいは個別性に基づく複雑さなどによって説明されよう.
精神科看護の専門性を問い直してみるとき,それについての確かな領域や見解を私たちは持ち合わせていないことを思い知らされる.けれども,精神科看護の専門性が必要かつ重要なことであることは間違いない.こうした私たちが当面している問題を解決してゆく1つの方策は,毎日行っている患者との接触(看護)そのものをもう一度見つめ直し,整理し,その中から技術として伝達できるものを抽出してゆくことにあると思われる.
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