くすりの毒性・11
マリワナ—薬物誤用
高橋 日出彦
1
1東京医科大学生理学科
pp.1193
発行日 1976年11月1日
Published Date 1976/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918023
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薬草あるいは薬物を宗教的陶酔,呪術的媚薬,毒殺などに使用しようとする意図は,治療に使用しようとする企画同様古いものです.この方面でのアルコールの成功は衆知のことですが,幻覚剤の使用もある民族においては実に有史以前から知られていたとも言われています.
現代の薬理学では,薬物誤用(drug abuse)という用語は専ら依存性を示す薬物に限定されています.人類はその発生以来,苦痛から逃れる方法を発見しようとあがいてきました.苦痛とはヒトの場合,肉体的痛みと精神的苦悩を意味しています.文明なるものは,人類が苦痛を克服しえた程度によって,規定されると言ってもよいでしょう.ヒトが精神的苦悩から逃れようとする願望は極めて強いものです.これが現代においても,宗教と薬物誤用が根絶しない理由なのでしょう.
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