Japanese
English
特集 誤用症候群とその対応
杖の使用による誤用症候について
Misuse Signs and Symptoms from the Use of a Cane or Crutch.
太田 喜久夫
1
Kikuo Ota
1
1帝京大学市原病院リハビリテーション科
1Department of Rehabilitation Medicine, Teikyo University Ichihara Hospital
キーワード:
誤用症候
,
杖
,
末梢神経障害
Keyword:
誤用症候
,
杖
,
末梢神経障害
pp.375-380
発行日 1994年5月10日
Published Date 1994/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552107607
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
理学療法,作業療法その他のリハビリテーション医療技術が適切に行われなかった場合に生じる種々の障害は誤用症候と呼ばれるようになった1,2).これは医原性(iatrogenic)の症候であり,絶対にあってはならないものだが,残念ながら現実にはしばしば見受けられる.
杖の使用による誤用症候とは,杖の握り方や杖の使用法を適切に指導できていない場合に生じる症候といえる.例えばその原因としては以下のものが考えられる.第1に患者が使用している杖そのものが不適切であること,特に杖の種類,握り手の形状,杖の高さが原因となりうる.第2に杖の握り方である.患者によっては杖荷重時に手関節背屈位で杖を握っていることがある.また,杖の握り手の一部を持ったり,前後逆に握ることもある.このように杖使用時に生体に加わる力が不適切になるために生じる症候が誤用症候といえる.なお,杖を使用する頻度が過度になったため生じる過用症候も,指導方法が不適切であった場合は,広い意味で誤用症候と考えられる.残念ながらこれまで誤用についての注意は不十分であり,多くの訓練や生活場面で生じていた障害が,実は訓練方法やプログラムが不適切であったために生じた誤用症候であった可能性があるのではないだろうか.
これまでも杖の使用による障害の報告は多いが,誤用症候の観点で考察されたものは少ない.したがってまず,杖の使用により生じた障害を文献的に考察し,それらが誤用によって生じたものであるかを検討する.
Copyright © 1994, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.