特集 看護と薬とのたたかい
疼痛即鎮痛剤からの脱却を—患者の訴えにより麻薬に依存してしまった事例から考える
佐藤 恵子
1
1神奈川県立成人病センター
pp.1003-1008
発行日 1976年10月1日
Published Date 1976/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917985
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はじめに
近年,放射線治療や化学療法は著しく進歩してきているが,まだ悪性新生物による死亡確率は非常に高い.悪性新生物に侵され治癒の見込みのない予後不良の人々は,‘死’の転機をたどるまでに期間の長短はあっても,耐えがたい痛みに苦しむ時期を経ていく.
‘痛みとは,現にそれを体験している人が表現するとおりのものであり,それを表現した時にはいつでも存在するものである’とM.McCaffery(中西睦子訳:痛みをもつ患者の看護,医学書院)は定義づけているが,私たちは痛みに苦しんでいる患者が,何らかの方法によってその痛みを訴え,表現して初めてそれを知るのであり,しかもそれはあくまでも推測にすぎない.どのように努力してみても明確に理解し,‘わかる’ことはできないし,原因を取り除くこともできない悪性新生物末期患者の痛みに対する看護は,最も困難なもののひとつにあげることができるだろう.
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