くすりの毒性・1
サリドマイド・ショック—新しい毒性学の出発
高橋 日出彦
1
1東京医科大学生理学科
pp.93
発行日 1976年1月1日
Published Date 1976/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917797
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20世紀,特に1940年代以後の医学の特徴の1つに,治療薬の開発の輝かしい成功がありました.ドラッグ・デザイン(drug design)という新しい部門が次第に確立して,医学に強力な武器を提供できるようになったことです.19世紀の医学,特に臨床医学に,ともすれば深くつきまとわっていたペシミズム・無力感を払拭する上に重要な役割を果たしたのは,第1に強力な治療薬の花々しい出現でありました.
この華やいだ,高揚した気分は,私たちのように戦時中に医学を学び,戦後に実際に研究活動に携わった者には,胸の痛くなるほどの実感をもって感じられるものでした.肉親を,親しい友を結核で失った人々にとって,ストレプトマイシンの出現がどんな意味をもったか,このただ1つの例をもってしても,私たちのおかれた状況を理解していただけるかと思います.
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