マイ・オピニオン
ひとりひとりが看護観を
村田 明子
1
1福井県立病院看護部
pp.547
発行日 1975年6月1日
Published Date 1975/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917258
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早くも1年がめぐって,今年もまた新しい卒業生を迎えるための採用試験を行った.面接では‘看護婦の仕事をどう人に説明しますか’と聞いてみたが,彼女らの答えには幾つかの共通点があった.それは精神・心理面のケアへの著しい偏りがあったり,他の職種に対しての看護の独自性について表現できないといったように,実習中に得られた知見が,看護の本質に照らして整理されていないことであった.
身体的ケアの軽視,精神・心理面への偏りについて考えることは,過去の診療介助,あるいは身体的ケア偏重に対する看護への反省と,今後の拡大方向のみがあまりに強調されすぎたための結果で,これではかえって全人間的看護を目指すといえなくなるのではないかと思うのである.私たちがいささかなりとも自信がもてるのは,身体的方面であるし,改められたとはいえ,現在の看護教育も身体的側面へ重点がかかっており,他はまだまだ弱い.がっちり教育した部分を軽視し,薄手の部分のみを強調することは,まことに危なっかしいことである.この傾向は,卒業看護婦にも同様なのではないだろうか.
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