医療への提言・5
機械と人間の接点
水野 肇
pp.71-74
発行日 1976年11月1日
Published Date 1976/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206073
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自動販売機と暴徒
複雑な現代社会は,高度で精緻な機械のメカニズムによって支えられている.医療の世界でも同じことがいえるが,この機械と人間の接点というのは,はたしてうまくいっているのだろうか.まず,次のような話からはじめてみよう.
たとえば,国鉄の駅で切符を買う.かつては,切符売場の窓口に行って「○○駅」と行き先を告げて1,000円札を出せば,行き先を印刷した切符と釣り銭が返ってきた.ところが,いまは違う.まず国鉄駅名の中に数字で運賃を書いた大きな掲示板の前に行かねばならない.そこで自分の行く駅の運賃を見て,今度は切符の自動販売機の前に立つ.ところが,運悪く1,000円札しか持ち合わせがないときには,駅の売店に行って,たいして欲しくもない週刊誌か,タバコでも買って釣り銭をもらう.不思議なことに,この国鉄の売店は国鉄のなかで機械化されていない唯一のものである.悪くいえば旧態依然,よくいえば人間関係が残っている.
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