Medical Topics
排卵誘発剤とその問題点,他
E.M.
pp.90-91
発行日 1971年9月1日
Published Date 1971/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916128
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最近オーストラリアで九つ子が生まれ,全世界の話題となった。これを産んだ母親は排卵誘発剤を使用して妊娠したものであると報じられている。この薬はしばしば多胎妊娠をひき起こすことが知られており,その結果として当然早産,未熟児,新生児死亡が多くなる。そのために英国の議会で,ある議員がこのような危険な薬の使用を禁止するべきだという発言をしたことも報ぜられた。事実,今回のケースでも最初から2人は死産であり,生まれた子もその後次々とみな死亡してしまった。
最近開発された薬剤のなかでも,すぐれたものの一つにこの排卵誘発剤がある。従来女性不妊のなかでも無排卵のものに対する有効な薬剤が乏しかったが,この種の薬剤が出現するに及んで,よく妊娠するようになった。この薬剤の一つは下垂体前葉ホルモンである卵胞刺激ホルモン(FSH)の製剤であり,更年期婦人の尿より抽出する。実際にはこれと絨毛性ゴナドトロピン(HCG)とを併用する。もう一つは抗エストロゲン作用のある化学物質で,ホルモン剤ではなく,その代表的なものはクロミフェンである。これらの薬剤はききすぎると一度に多数の卵を排出させるため,多胎妊娠を起こす原因となる。したがってせっかく妊娠しても,胎児の数が多ければ多いほど,そのほとんどを失うことになる。
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