なでしこのうた
闘病生活で培った真の生き方
塩沢 美代子
pp.133
発行日 1970年5月1日
Published Date 1970/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914895
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3月にはいってぶり返した寒波に章子の仕事場からみえる妙高黒姫の峰はまた白くなった。快晴には遠く北アルプス連峰の浮ぶ西窓は雪雲と春がすみが妙にミックスして煙っている。この眺めをいちばん楽しんでくれる東京の友だちが明日はシーズン最後のスキーを楽しみにくるという。卒業・入学旅行シーズンを控えてささやかなアキ洋裁店もかき入れどき,予定表をにらみながら一両日は彼女とゆっくり遊べるようにと,せっせと針を運ぶ。20年近くもまえ療養所で親しくなったその友の来訪の度に自分の半生をしみじみ回想する章子だった。
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