特集 白衣
看護婦の制服の歴史と意義
村上 信彦
pp.32-35
発行日 1970年4月1日
Published Date 1970/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914834
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Ⅰ
まず第一に知っていただきたいのは,看護婦の制服は日本の女の洋装のはじまりで,制服として明治年間ただひとつのものだったということです。
ここで服装史を論ずる必要はありませんが,世間には誤解が多いのでちょっと説明しておきます。たとえば明治の女の洋装は,明治18年ごろの鹿鳴館風俗からはじまったなどとよく言われますが,あれは風俗でもなんでもない一時的な,いわば仮装です。目的が不平等条約解消のための演出だったこと,ごく一部の大臣や華族の夫人たちだけが着たこと,しかも夜会服で日常着ではなかったこと,すべて直輸入で,いまの金で一着80万円以上したこと,しかも数年間で消えてしまったことなどを考えれば,風俗の歴史とはなんの関係もないことがわかるでしょう。明治の女の職業といえば,製糸・紡績をはじめとして,教員,電話交換手,その他いろいろありますが,すべてキモノでした。ただ看護婦の制服だけが,最初から洋式を取り入れたのです。
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