特集1 患者を考える
レポート —入院体験のなかから—退屈してる暇がない/尊大ぶりに立腹/“誤診”と“逆立ち”
堂島 正
1
1元国会議員秘書
pp.25-32
発行日 1969年7月1日
Published Date 1969/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914528
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
わたくしども結核療養者にとって,戸惑いをおぼえる質問のひとつに“さぞ,お退屈でしょうね”といわれることがある。実際,わたくしどもは“退屈でしょうね”とか,“一日が長くてお困りでしょうね”といわれるたびに,内心,なんともいえない困惑を感じさせられるものである。療養者というものは,終日ベッドにあって,なにもしないのだから,さぞかし時間をもてあますものであろうと,いわば観念的に病人の生活を思い描き,それに対して同情するという,善意の誤解ともいうべきものが,上記の“さぞ,お退屈でしょうね”という質問になるのであろう。相手の善意がくみとれるだけに,いっそう患者は困るのである。つまり療養者というものは,一般に,決して退屈きわまる生活を送っているものではないということ,結構,なにかと忙しい毎目をすごしているのだということを,看護婦さんを含めて,普通の人々はあまり理解してないように思われる。
わたくし個人についていえば,昭和28年以来の長期療養者である。現在のように結核ベッドの回転が早くなった事態からみると,むしろ“古典的”ともいいうるような療養者である。正味13年間自分の脚で立つということを忘れた,安静度1度の重症患者でもあった。つまり完全に10数年の問,ベッドから一歩もはなれない24時間をくりかえしたわけである。
Copyright © 1969, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.