グラビア
世界医療風俗—11世紀の医師と患者
石原 明
1
1横浜市立大
pp.101
発行日 1968年8月1日
Published Date 1968/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914098
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大英博物館にある11世紀のミニアチュアのうち、医療風俗をよく描いたものをえらんでみた。ヘモの手術、鼻のポリープの手術、眼の手術をしている医師。そして当時流行した刺絡(瀉血)と烙鉄(焼灼)をうけている息者。医師はタイツのように密着した細いズボンの上に裙の広い服を着てバンドで緊く固定した服装をしているが、常人と違うところはドクトルの権威を示すガウンをはおっていることである。後世になるとこの傾向はますます強調され、ガウンのほかに長髪のカツラをつけるようになる。
ヘモの手術をうけている患者は裸体で、特殊な体位をとっているのも興味深い。刺絡をうけている患者はネグリジェのようなものに着換えているが、これが恐らくベットに横わる時の服装であったろう。中世紀の医療風俗──ことにより医師よりも息者の特殊な服装を描いた資料はまことに少ない。この絵はそんな意味からも医療風俗として貴重である。
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