特集 看護の論理もとめて
看護婦像の歴史的変遷
富岡 次郎
1
1京都大学
pp.32-36,54
発行日 1968年4月1日
Published Date 1968/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913938
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はじめに
私たちが日本における「看護婦像」について調べるとき,これまでいつの時代にも異なった二つの看護婦像があったことに気づくであろう。その一つは,国家権力やその時の支配者層によって,上からつくりあげられた像である。これは看護婦とはこんなにすばらしいものであると,看護婦自身にも一般国民にも信じこませようと意図されて,意識的に政策的につくりあげられたものである。いわば,これは看護像についての上からのシンボル操作である。
もう一つの像は現実に働く看護婦の姿である。こまねずみのように目まぐるしく立ち働く看護婦はひどい重労働のために疲れ果ててきた。実は,これが看護婦の本当の姿なのである。シンボル操作で美しいベールに包まれた看護婦の虚像と,彼女たちのきびしい現実の姿とはなんとかけ離れていることだろう。シンボルと現実がこれほど大きくかけ離れている職業が他にあるだろうか。私は看護婦像の虚像と実像を歴史的にたどることによって看護婦の真のあり方について考える糸口をまさぐり出したいと思う。
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