特集 看護の論理もとめて
医療倫理と看護
高橋 晄正
1
1東大医学部
pp.15-18
発行日 1968年4月1日
Published Date 1968/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913932
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医療と科学性
人間は,ホモ・サピエンス(知識人)であるとかホモ・エコノミクス(経済人)であるとかいわれる。そのいずれも誤りではないが,それはあるがままの人間のもつ多面的な姿の,ある特殊な側面を述べているにすぎない。わたくしたち医療従事者の目の前にあるのは,まず第一に,細菌に侵され,外力に傷つく生物としての人間である。そこでは,医療は生物科学の法則に従わなければならない。それを無視した医療は,どのような真ごころから出たものであっても,何がしか病人に損害を与えているはずである。わたくしたちが医療とか看護とか呼んでいる実践活動が正しいものであるための第一条件は,その科学性であることに,人びとはもっと注意を払わなければならない。医療や看護の倫理性の基礎として,まずその科学性を論じなければならないのはそうした理由による。
医療や看護の倫理性は,それらの人間活動のモチーフを規定するものであり,科学性は,病める人間の精神と肉体とにたいして,それらを好ましい方向に変えていく実践活動の手順について論じられる技術の問題である。したがって,倫理性と科学性とはここでは何ら矛盾するところではなく,人間活動の両側面を示すものであるといえよう。
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