歴史の女性
福田英子—婦人解放の先駆者
福地 重孝
1
1和洋女子大
pp.104-105
発行日 1965年6月1日
Published Date 1965/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913637
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福田英子(1865〜1927)が,報いられることの少ない生涯を終り,淋しく東京駒込の染井墓地に葬られたのは38年前の昭和2年である。彼女は,その半生涯をつづった自序伝「妾の半生涯」(明治37年出版)に,自分の半生を回顧して「罪深き人」「愚鈍なる人」と自嘲するごとくいっているが「妾は蹉跌のために一度も怯みしことなく,妾の天職は戦いにあり,人道に反する罪悪との戦いにあり,といっている点をみると,これまた日本婦人参政権運動の源流をつちかった女傑の一人にあげられよう。彼女の没後の社会主義運動の弾圧,それに続く日華事変と太平洋戦争の大きな時代のうず潮は,一時彼女の存在を忘却の彼方に消し去ったかにみえたがしかし戦後の日本民主化のうごきと婦人解放の時代思潮は,新鮮に,そして再び大きく彼女の存在を歴史の上に浮かび上らせたのである。世俗的には,決して幸福とはいえなかった彼女の生涯は,婦人解放の先駆者の荊の道として,現在的視点でもう一度みなおされよう。
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