医学書院/出版だより
—福田保教授監修—「臨床輸血学」
東 陽一
1
1九州厚生年金病院
pp.48
発行日 1964年1月10日
Published Date 1964/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202961
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故加藤勝治博士の「輸血学」の発刊されたのが,昭和26年3月で,これが,近代輸血に関する書物のはしりであつた。それから10年余りの間に,輸血ほど,医療方面に大きな貢献をしたものはなかろう。しかし,血液は,あくまでも,人体の一部であり,それがたとえ人間であつても,他の人の体のなかに入つたとき,いろいろの反応の起こるのは当然のことであり,できるならば,血液に代るものが人工でできる日の一日も早くくるようにと祈つているのは,私たち,輸血を盛んにしようと志したものほど強いのではなかろうか。しかし,その日は,いつのことであろうか。その間にも,毎日毎時どこかで何か事件が起こつている。それを防ごうと一生懸命に努力され,一昨年の春には,日赤輸血研究所の村上・徳永両君による立派な本が現われたが,今度は,日本輸血学会の会長を長く勤められた福田保名誉教授の監修で,25名の執筆者による「臨床輸血学」が医学君院から発刊された。その執筆の担当者はいずれも,それぞれ担当部門の新進の権威者であることに,本書の大きな信頼性と価値が高くかわれる。もし将来この書が,血液学や輸血,輸液学の進歩につれて,再版あるいは改訂される場合には,ますます広い分野にわたつて公平に業績を集め,それに権威ある批判とまとめを各項毎に加えていただぎたいものである。
とにかく,忙がしい実地医家にとつても大変便利で有益な一書であることを強調できると思う。
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