想園
看護に生命をふきこんで
宮本 郁
pp.69-70
発行日 1965年3月1日
Published Date 1965/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913536
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看護婦の社会的地位の向上や,専門職としての確立は,国民の健康度に影響をおよぼす重要事であると私は思っている。また,これを完成されるには,今をおいて他にはないと確信してもいる。この貴重なチャンスを失って,看護婦が昔のままの,虚無と惰性と慢性疲労の中で,自ら自已の希望も使命感も,まして,誇りさえすててしまっては,看護婦という職業の魅力がなくなるのは,当然のことである。そこで私は,あえて一つの提案をする。
「看護婦さん! どのような逆境の中にいても,決して負けないで,不死鳥のようによみがえり,健康と幸福を獲得して下さい。そして,医者という科学の奴隷でしかなかった看護を,その屈辱の中から解放し,哲学と愛への開眼を成し,看護に生命をふきこんで下さい」と。これは私自身の永い暗い,昏迷にみちた看護生活から体得した一つの啓示である。実は,私自身も,看護という仕事を,あまりの苦しさから,たびたびすてた経験の持主である。でも今は,もう生涯この仕事をすてようとは思わない。すてるどころか,今はどこの仕事に,喜びと誇りをもったことは,かつてなかったことを申しのべたい。そして私は今,看護婦であることの幸福感をしみじみ味わっている。希望も誇りも失いそうだとおっしゃる皆さんに,なぜこのような境地になれたかを反問して頂けたらと思っている。
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