ナースのための臨床薬理・7
鎮吐剤―嘔吐のしくみ,その抑制
橘 敏也
1
1聖路加国際病院内科
pp.76
発行日 1967年10月1日
Published Date 1967/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913320
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嘔吐のしくみ
嘔吐の中枢は延髄にあるが,この中枢は中枢そのものと,その中枢への嘔吐刺激を伝える化学的催吐刺激感応帯(略して感応帯chemoreceptoremetic trigger zone CTZ)より成り立っている。したがって嘔吐刺激の原因となる物理化学的刺激がまず催吐センターをゆさぶって,そこで生じた刺激が嘔吐中枢細胞を興奮させて嘔吐が起こる。この嘔吐中枢の周辺には呼吸中枢,血管運動中枢,唾液核,前庭神経核などが集まって存在するから,これがいっせいに刺激されて,嘔吐という複雑な要素からなる現象が催起される。
この嘔吐の刺激としては,次の諸因子があげられる。化学薬品の阿片(アポモルフィン,モルフィン),デメロール,麦角,ジキタリスなどの薬物,麻酔薬のあるもの,その他細菌感染,放射線障害,尿毒症による異常代謝産物──これらは感応帯を介し,間接的に中枢を刺激するもので,中枢を直接刺激することはない──それに物理的刺激としての胃腸刺激,子宮・腎孟・膀胱の拡張や外傷,内耳(迷路)刺激──これらも感応帯を介して嘔吐中枢を興奮させる──,一方,視覚刺激,脳圧亢進,痛刺激,精神因子も嘔吐中枢を直接刺激して嘔吐を起こさせる,内臓からの刺激を感応帯に伝えるのは自律神経で,主に副交感神経が当たるが,胃腸に関しては交感神経を介する。
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