脳のはなし・7
ことば(1)
千葉 康則
1
1法政大学
pp.74-75
発行日 1967年10月1日
Published Date 1967/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913319
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〔7〕ことば−1
人間の動物系
脳のはたらきが反射を中心としていることは説明したが,これは,いわば動物と共通した機能である。もちろん,人間は動物であるから,人間の機能にはこのような動物と共通したものが土台となっている。私はそういう機能を人間の動物系とよんでいる。しかし,人間は同時に動物ではない。そこで,どの部分が動物で,どの部分が人間であるかをはっきりさせる必要がある。「人間は考える葦である」「人間には思考力がある」「人間には精神がある」「人間は火を使う」「人間には特有な生産関係と社会がある」などなど,動物との違いをかぞえあげればキリがない。しかし,この問題のカギを握るものは,「人間以前の動物」から「動物以後の人間」に進化したときの経過である。
この問題は主として人類学または生物学で取り扱っており,しかも,まだ統一した見解は見出されていない。「人間以前の動物」も現存していないし,残されている証拠も十分には見出されていないから無理もないが,およその見解はまとまりつつある。それによると,人間は2本足で完全直立してから人間への第一歩をふみ出したと考えられる。そうして手を器用に使うことによって大脳(分化機能)が発達し,口のまわりの筋肉の器用化,音の分化能力の発達に伴ってことばを使うようになった。
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