看護の潮 看護学形成への探求
誌上看護研究室 第2のテーマ
リハビリテーションと家族指導に重点を
森 のぶ
1
1国立ガンセンター
pp.24-25
発行日 1967年2月1日
Published Date 1967/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913027
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癌の根治手術が患部を大きく切除しなければならない方法である以上,その部位によって,生涯機能障害を残して社会生活を送らなければならない人が生じてくる。
年齢,性別および社会的役割によって,その障害から生じる事態は異なるが,上顎癌においては容貌の変化,偏眼,発声障害があり,それが退院後の生活を大きく左右することも考えられる。放射線治療だけでは治癒があやぶまれると診断され,手術が決定した後の患者の動揺は大きく,特に眼球摘出が予想される時,それは最高に達し,死を考える人も少なくないように思われる。40歳台の後半から50歳の前半にかけての男子では,経済的・職業的悩みが多く,前職に復帰できないような場合,一家の責任ある立場の人間として,どのように対処しようかということが,闘病生活と並行して前面に立ちふさがってしまう。女性の場合,未婚者の症例はなかったが,既婚者では容貌の変化をおそれるのが一番多い。本人だけでなく特に夫が「それだけは何とか考慮してほしい」と訴えてくる。そういう訴えは1度や2度でなく,一応納得したように思えても時間が経過すれば前回と同様の質問が繰り返えされることは少なくない。そのような人たちを,どのようにして治療に立ちむかわせるかということは,私たちに課せられた役割ではないだろうか。
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