日本看護史の旅・14
道修町の神農さん(大阪)
石原 明
1
1横浜市大
pp.1
発行日 1967年2月1日
Published Date 1967/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913020
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大阪市東区道修町(どしょうまち)といえば,日本の薬業の中心地で,江戸時代から栄えたところ。100年以上の老舗は近代化した大メーカーとなっても,本社をここにおいているところが多い。2丁目の角に近い奥まったところに,業者たちが薬祖神とあがめる少彦名神社があるが,神農さんの通称の方が親しまれている。毎年11月22日前後が大祭で,このころになると町はいちだんと活気づき,大竹に趣向をこらした飾りが各メーカーの軒先に立てられ,たなばたを連想する。かつて120年前にコレラが流行した時,業者たちは,虎の頭骨を主剤にした予防薬を無料配布したことがある。それに因んで,今では張子の虎を笹につけたお守りが10万個も配布されるが,疾病予防と救療精神をシンボルにした,愛すべき民芸品である。神農さんの虎をいただいて家内におけば悪病も近寄らないという素朴な信仰は,迷信どころか,かえって衛生思想のPRになることを認識しなければならない。看護に関係ある民芸品として,近ごろはナースの間にも人気がある。
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