カンボジア看護紀行・最終回
アンコールワットに想いを残して
手柴 房子
1
1国立東京第一病院手術室
pp.112-113
発行日 1966年12月1日
Published Date 1966/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912983
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アンコールへ
黒々と繁るジャングルの中にそびえ立つアンコールの塔,夢の世界にでも迷いこんだのではないだろうかと見まごうほどすばらしいクメールの芸術,幾世紀を風雨にさらされ,樹木に立ちはだかって悠然と生きぬいてきた偉大なる歴史の遺跡群,カンボジアを訪れる時,このアンコールを除外してはカンボジアを見たとはいいきれぬと申しましても過言ではないでしょう。今回はこのアンコールへ御案内致しましょう。首府プノンペンから陸路315キロ,プノンペンを出て約3キロの所トンレサップの流れをフェリーで車ごと渡り道中動物に注意などの道路標識をみながら,カンボジアの南側の村々の豊かな緑を楽しみ,ある時は広漠たる草原をつっ走り,ある時は小ぎれいな町のバンガローで休憩しつつ走ること約6時間,9つの頭をもった蛇ナーガの装飾を欄干にもつ古ぼけた異様な感じの橋,「スピアン・プラプトス」を渡ると間もなくロルオス遣跡群を通過して静かなたたずまいの別荘地シムレアップの町が,有名なアンコールの町として全体に誇り高き香をただよわせつつ観光客を吸い入れてくれます。州庁舎を通りぬけ,きれいに舗装された道路の両側に車の音も吸収してしまうほどの樹木をみながらゲートをぬけると,ほどなく,突然目の中に飛び込んでくるアンコールワットの姿,思わず背を正したくなるような端然たる偉容に「来てよかった!すばらしい!……」という感謝に胸うたれます。
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