特集 看護婦の勤務と生活の合理化
第3部 対人間係をよくするために
患者との応待
富田 重雄
1
1財団法人東京生化学研究所
pp.112-113
発行日 1961年6月15日
Published Date 1961/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912554
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ことば以前の問題
医療は,医療担当者と患者との人格の交流であるといわれる。この場合,ことばが共通の媒体となつて両者の心と心を通じあわせるのに,大きな役割を果たすのであるが,ことばつかいや態度のよしあしが,両者の心を結びつけるかどうかを決するものであることは,わたくしどもの日頃経験するところである。
医療を行なう側と医療を受ける側の理想的なすがたは,いわゆる両者の呼吸が合つて,その人間関係において相互理解と相互信頼という親和の関係が成立することである。これは,医療を進めてゆくのにもつとも必要な前提条件といつてもよいと思う。ことばつかいもこうした素地がなければ,たとえいかに立派に,完壁なことばであつても,相手に効果的にひびかないばかりか逆にそらぞらしく空転してしまうことさえあろう。これはことば以前の問題ともいい得ると思うが,わずらえる人のわずらいを,その看護の業務とするナースとして,その看護活動をじゆうぶんに効果あらしめるためには,自分の側と看護を受ける側のこうした好ましい素地の育成を心がけることは何よりもだいじなことである。
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