特集 看護婦の勤務と生活の合理化
第3部 対人間係をよくするために
話し上手聞き上手
堀川 直義
1
1朝日新聞社調査研究室
pp.109-111
発行日 1961年6月15日
Published Date 1961/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912553
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〈話し上手・聞き上手〉
「きく」という日本語には,ふたつの意味があります。「ものをたずね質問する」ことも「きく」といい,その答を耳で受け取るのも同じく「きく」といいます。道をたずねることを「道をきく」といいますし,お話を聞くのも「きく」であります。つまり質問するという積極的作用と,答を受け取る受動的作用を同じ言葉で表現しているわけです。そして,口できくことと,耳で聞くことが同じ「きく」であることは,意味が深いように思います。同じ人間の中に「きく」と「きく」とが輪のように円環的作用をしているわけです。問う人すなわち答をうけとる人ということなのです。このように「きく」と「聞く」がひとりの人間の中で輪になつていると同時に,問う人と答える人と,話す人と話を聞く人も輪になつています。
講演とか,ラジオ放送などの特別の場合は別として,普通に話を聞く場合は,聞き手が次に話し手になり,話し手は次に聞き手になるという風にぐるぐる回転して話になつているのです。その意味では「聞く」ということは,「話す」ことの前提でもあります。むかしから「話し上手は聞き上手」という言葉がありますが「上手に聞いてやれば,こちらは何も話さなくても,相手は快く話し満足する」という意味もありましようし,また,聞くことが上手な人は,当然話すことも上手だという意味もあると思います。
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