想園
大病院に就職して
円山 晴海
pp.68-69
発行日 1964年12月1日
Published Date 1964/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912474
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学院卒業後私たち40人は東京の大病院下に就職した。そこで知ったのは医療の最大目的は黒字経営であること,またその目的を達成するためにどの病院も企業化の道を着々と歩んでいることだった。現在の保険制度からすれば赤字が当然であるのに対し,経営者は黒字をさけぶ。このしわ寄せは微力な看護にくるのは明らかだ。私たちナースは企業体の中の小さな一個の歯車に過ぎない。疲れて油が無くなればギーギーと音を立てながら磨滅し落伍し惰性で仕事をするようになる。この惰性のなかに,看護というものがあるだろうかと疑問を持つのは私一人ではないでしょう。この問題の多い病院経営の中で,より身近な問題点を一看護婦の目で拾ってみよう。①低サラリー,3年間の専門教育また労働力に比して安すぎる。②重労働,業務分析は完全に行なわれず,事務,看護助手の業務もナースが行なわなければならない。ナース1人に対して患者数が多い。⑧変則勤務,遅出早出準夜深夜は1カ月の半分におよぶ。これらは他の職業に類の無い時間拘束である。④時間外勤務が多い,重症患者が多い。ナースー人で受持つ患者が多すぎる。⑤寮または宿舎,一室に数人もっとも大切なプライベートな時間が無に等しい。だが上記の理由から考えて下宿する能力もサラリーもない。低サラリーであるために夜勤時間外勤務を多くする。この悪循環が私たちの肉体をむしばみ,若いエネルギーを消耗させるのだ。
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