精神身体医学講座・4
心と病〈2〉
前田 重治
1
1九州大学医学部心療内科
pp.34-37
発行日 1964年8月1日
Published Date 1964/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912324
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前回に,一般的な立場から,心身症の発生の中心をなしている適応についてのべました。ここでは,いろいろな心理的な刺激が,身体の症状となって現われてくる身体化のメカニズム(精神身体的な機制)についてのべようとおもいます。
心身症発生のからくり
1.緊張による反応
すでにのべましたように,日常生活において,人の欲求はいつも円滑に満たされるものではなくしばしば阻止されたり,葛藤におちいったりするものです。外界のいろいろな現実的な原因によって,欲求が満たされないとき,不満な感情が心のなかにうっ積し,ある種の心の緊張状態がおこってきます。そのさいその心のエネルギーが,なんらかの行動や感惜などとして放出されずに,ひどくうっ積してくると,緊張は主として自律神経系をとおって,身体のさまざまな器官へとはけ口を求めるようになります。外界の妨害物がつづいて,このようなうっ積と緊張がつづき,持続的な神経症的な反応が生じたばあい,これを現実神経症と呼びます。頭痛,頭重,手のふるえ,めまい,体の緊張感,不安定感,心悸冗進,疲労感,胃腸障害,不眠,頻尿,発汗などいろいろな症状をとって現われます。
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