社会病理と精神衛生・12
家出のすすめ
高木 隆郎
1
1京都大学医学部精神科
pp.38-39
発行日 1964年8月1日
Published Date 1964/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912325
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1.家出はなぜ悪い?
男子志を立て郷関を出ず,学もしならずんば死すとも帰らず—昔の人は皆,合法的・非合法的に家出をして一人前になったものだ。時には貧因なるが故に,食いぶちをへらすために,10歳にもなってすこし労働力がでると家を追い出されたりした。
ところが,義務教育中の少年少女はともかく,それ以後の年令でも未成年者の家出は,ぐ犯,不良行為として警察で保護されたり,社会問題となって,とかく“良からぬこと”とされている。もちろん,少年の家出というのは,生活能力がないとか,労働規準法違反(雇い主側の)の問題とか,不良交友を経て非行予備群に陥るとか,あるいは自殺の危険や精神病の疑いなど,何らかの助力,保護を加えてやらねばならぬことが往々あるのは当然だが,家を出るということ自体必ずしも悪いことなのだろうか。じじつ「大平洋ひとりぼっち」の堀江青年は大いなる家出者ではないだろうか。
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