やさしい統計学・3
統計方法と確率
西 真楠
1
1厚生省統計調査部
pp.50-51
発行日 1964年1月1日
Published Date 1964/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912115
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われわれは,なにか自分にわからないことや自分が知らないことがあると,「わかりたい」「知りたい」という欲望が頭をもたげてきます。すなわち,知識の不足を感じてこれを満たそうという本能で,いわゆる知識欲といわれているものです。そして,現在の最高の知識を集めて考えても,なお,知ることのできない点を,客観的方法—誰が考えても妥当と認められる方法—によって追究し,新たな知識を開発する行為を科学的研究と呼んでいます。科学的研究の対象となる事象が,人手をつかって繰り返し同一の状態を再現できるような事象のときには加工の方法を変えることによっておきる事象の変化から,因果関係を明確にし,理論的に新知識をえるという実験方法がとられます。たとえば物理や化学の研究がそれです。これに対して,人手では再現不可能な事象や,同一の加工を行なっても同一の結果をえられないような事象,たとえば社会現象,自然現象,生物の形態や機能などについての事象などにあっては,実験方法が使えないか実験方法のみは明確に因果関係を捕え,理論的に新知識をうることができません。また,一つの事象を観察して,たとえそこに新しい事実を発見したとしても,同種の事象を通じてみなければ一般性のある新知識と認めるわけにはゆきません。さらに,男女の割合などのように同種の事象を通じてみることによって,はじめて知ることができ,一つの事象をいかに深く観察しても知ることができない知識もあります。
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