私論
医療における確率について思うこと
寺井 秀富
1
1大阪公立大学整形外科准教授
pp.32-32
発行日 2023年1月1日
Published Date 2023/1/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei74_32
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あれはたしか中学の理科か高校の物理の教科書であったと思う.その教科書の「まえがき」にはきちんと本書を勉強すれば地球外生命体など存在しないことが理解できるはずであると書かれてあった.もうすでに40年近く前のことであり,さまざまな記憶が曖昧になっていくなか,その「まえがき」の一節だけは鮮明に覚えている.その書かれた内容に対して強烈な反発心を生じたからである.おそらく教科書の記述に対して間違っていると思ったはじめての経験であったからであろう.なぜ,筆者は教科書の「まえがき」で,地球外生命体がいるはずがないと断言したのであろうか? まだまだ未確認飛行物体(U. F. O.)や幽霊などオカルトを扱ったテレビ番組がブームであった時代,すべての事象は曖昧模糊としたものではなく,科学的にきちんと説明がつくのであるということを学生たちに伝えたかったのかもしれない.しかし,当時の私はそのような意図が理解できるほど大人な思考は持ち合わせておらず,生意気にも教科書が間違っていると思ったのである.
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