巻頭言
精神分裂病離れ
挾間 秀文
1
1鳥取大学医学部神経精神医学教室
pp.476-477
発行日 1978年5月15日
Published Date 1978/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202757
- 有料閲覧
- 文献概要
精神医学の臨床講義を受けるようになったばかりの一人の学生から,次のような質問をうけた。「間もなく精神分裂病の病因が解明されて,分裂病が神経内科で取扱われるようになったら,精神科で診るものは神経症だけですか」。精神分裂病の究明が精神医学研究の中核であり,その治療が精神医療の最大の課題であると信じてきたわたくしには,近い将来,この難病がも早精神科医の関心事でなくなる時代がくることを予言した学生の言葉は,確かに一つの驚きであった。そんな時代が一日も早くきて欲しいと思うが,精神医学の研究・医療の水準ばかりでなく,われわれ精神科医の心構えも,まだその段階を考えるまでに至っていないのが現状というべきであろう。
この質問には,内因性精神疾患の病因あるいは病態生理が生物学的に解明されれば,精神科診療の対象ではなくなる,といったも一つの指摘があるようである。これは精神科に対する若い医学生の素朴な認識であろうが,精神科医にとってもやや重大なアイデンティティの問題である。
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.