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色彩と患者心理
小林 重順
pp.64-67
発行日 1963年10月1日
Published Date 1963/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912042
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●ホスピタル・カラーは訴える
建築家の友人が,ルンゲでかなりながく,日大病院に入院しているので,見舞にいった。近くでバスをおり歩むと,行手に病院の白い外壁が,青空にそびえてみえてきた。
青い空に白い壁—いかにも清らかで,美しい。病院がここにある,というイメージを端的に伝えてくれる。だが冷たい。わたしは患者のひとりとして,そこを訪れているのでないにしてもその白さから,友の青白い顔を想像したのである。もし,これが,淡いクリーム色だったら,健康さのイメージが伝わってきていいのだが……などと考えながら,ながい廊下をとおっていった。灰白色の病棟と病室,友の青白い顔に接して,なんとなく心さびしい。「色彩がよくありませんね」という私の気持を,友は察してか待合室へゆきましょうという。待合室の床は,やや赤味をおびたえび茶色と青味がかった緑色の配色である。それも,大胆だが,落ち着きのある色どりなので,わたしの心に,なにかかぎりない平安をもたらしたかのようだ。
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