医学講座
角膜移植とアイ・バンク
加藤 格
1
1関東逓信病院眼科
pp.53-55
発行日 1963年10月1日
Published Date 1963/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912039
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■角膜移植は昔から行なわれておりました
近ごろ,新聞社の《光のプレゼント運動》などで角膜移植やら角膜銀行,アイ・バンクといった言葉が盛んに使われております。しかし角膜移植そのものは決してめあたらしいものではありません。この着想については,欧米で今から200年も前の西暦1700年代の後半,すでにいくつかの論文があり,わが国でも明治38年,水尾源太郎氏が10名の患者さんに半分は人間の角膜を,半分は家兎の角膜を移植してそのくわしい経過を観察したのをはじめいろいろの報告があります。戦後では昭和25年の第54回日本眼科学会総会の,特別講演に中村康氏が《角膜移植術の基礎的研究と其の臨床的応用に就て》と題して164例におよぶ経験例を報告されました。
角膜移植は,このように最近になって急に始められたものではありません。ただ近年になって変わったことは,抗生物質など薬剤の進歩が,この手術をたいへんやりやすくし,予後もよくしたこと,それにもう一つ社会的なこの問題への関心が急激にたかまって来たことこの二つでしょう。
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