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ナースと労働—四つの生活記録から
水野 肇
pp.24-29
発行日 1963年2月1日
Published Date 1963/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911846
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5.000円に泣く
母からの送金依頼
川口恵美子さん(23)は,東京都内のある病院の看護婦寄宿舎の自室で,1枚の手紙を前にしたまま,もう1時間ばかりもじっとすわったままだった。時間は夜の11時を回っている。4人1部屋というこの6畳の寄宿舎には,この日は勤務の関係で恵美子さんだけがまるで取り残されたようにぽつんと1人ぼっちで,それを象徴するかのようによごれた40ワットの電灯が,あたりをうす暗く照らしていた。恵美子さんの前にある手紙はお母さんからのもので,5,000円の送金を依頼してきたものだった。“なんとかして……”と思うものの,恵美子さんには金もないし,友だちに借りるといっても,誰も持っている人はいない。“なんとか……”と思っているうちに,もう1時間もたってしまっていた。
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