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癌末期患者の心理把握を試みて
中島 朱美
1
1国立京都病院
pp.27-28
発行日 1962年12月1日
Published Date 1962/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911795
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近ごろ癌疾患がいちじるしく増加し,それに伴い治療も外科的,内科的に目ざましい発展を見せておりますが,まだその死亡率は最高を示し,末期症状といわれる患者の多くは,肉体的苦痛はもちろん,精神的にも背負い切れないほどの苦しみを持っており,治療は容易に効果も見られず,日増しに悪化し,その苦痛に耐えかね,しきりに救いの手を求めております。しかしこの患者に私たちのできることは何であろうかと思う時,あまりにも看護の未熟さに,ただいらだたしさを感じることもたびたびです。しかし患者の要求は,いまや警鐘を乱打するごとく,私たちに一時の裕余も与えてくれません。この患者たちの暗闇の中をさまようごとく行き悩む姿は,生き地獄さながらであります。医師の指示される鎮静剤,鎮痛剤を注射して,時には暗示的に生食の注射などして逃げ帰るような看護婦を患者は要求しているのではないことを痛感し,まだまだ何かこの人たちを救う方法はいくらかほかにあるのではないか,本当に彼らの求めているものは何か,死に直面しながら何かを求めているのではないか,もっとも苦しい時は何を求めているのだろうか……と,それを知るために私たちは患者の気持の中にはいっていかなければならないことを考え,困難な問題を掲げて困難な研究にあえてはいることに致しました。
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