連載 限りある命をおしんで・9
異国に救いを求めて
工藤 良子
1
1日赤中央病院癌センター
pp.69-71
発行日 1962年1月15日
Published Date 1962/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911555
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蒸し暑い夏の昼すぎ,船の人と思われる陽焼けした体格のよい中国の人らしい紳士が通訳と連れだつて内科部長を訪れた。
彼は貿易に関係しているオフィサー(高級船員)で,11カ月前に直腸癌の手術を受けてコバルト照射療法も終り,再発の心配はないと大鼓判を押されてきたのだが,最近,非常に疲れやすく目だつて痩せて来たようにも思われる。そのためある友人の紹介で内科部長を訪ねて来たのだと言う。
直腸癌の再発の懸念で来られたのであろうが顔には何らの不安もみせていなかつた。
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