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看護婦も細薗感染から身をまもろう—馴れと不用意とに芽生える危険
中溝 保三
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1荏原病院伝染科
pp.53-55
発行日 1961年10月15日
Published Date 1961/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911493
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かつて,もうひとむかしも前のことになるが,サルファ剤が細菌性赤痢の治療にすばらしい効果を示した時代があつた。そのころある有名な細菌学者が,サルファ剤で赤痢を片づけることができるかも知れないと述べたが,それから1〜2年のうちにサルファ剤のきかない耐性赤痢菌がどんどんふえて来て,サルファ剤ではどうにもならなくなり,その細菌学者が見通しをあやまつたと頭をかいたことがあつた。ところが,その後にクロラムフェニコール,テトラサイクリンなどの抗生剤が登場して,サルファ剤無効の赤痢にも卓効を示すことが知られるようになつて,今度こそ赤痢は根絶させることができるのではないかとかすかな期待をいだかせた。そして抗生剤がむやみやたらと使われた結果は,またも抗生剤に耐性を持つ赤痢菌が年毎にふえて来ており,現状では,この耐性赤痢菌の激増,流行をどのようにしたら食い止められるか,その治療をどうすべきか,といつた困難な問題が残されることになつてしまつた。
このように細菌と薬剤とのたたかいは,いたちごつこのようなもので,これからもぬきつぬかれつのきりのない競走を続けてゆくものと思われる。
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