とびら
ものごとを気にしない
金子 光
pp.1
発行日 1961年10月15日
Published Date 1961/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911485
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画家の岩田専太郎氏はこんなことをいつておられた。「眠らないということを,ひどく気にする人がある。たしかに医学的統計の上では1日何時間ときめた睡眠時間が必要であろうが,そう学問上定められたものを忠実に守れないのが実生活かもしれない。睡眠も月給袋みたいなもので,今月使いすぎたら来月倹約すれば何とかなるらしい。私の場合,1日のうち2〜3時間しか眠らない日がつづくときは珍らしくないのだが,仕事のひまなときには,8時間たつぷり眠る。ねだめをしているように思う人もいるが,ためているのではなくて,かりを返えしているのが本当らしいと私は思つている。そんなときには一つ位頭をけとばされても目がさめない。夢もあまりみないようだからよほどよく眠つているにちがいない。」この考え方は,岩田画伯が,自分の生活のペースをちやんと心得ておられることを示しています。睡眠時間は心身の健康を保つための重要な要素ですが,少々時間的に不足であるからといつて心身に及ぼす影響はさしたことはありませんから,「今日は何時間眠れた」「昨日は何時間たりなかつた」とそんなに神経質になる必要はないと思います。睡眠によらず何事でもすべてそういつたものではないでしようか。どうも私共日本人というといささか大げさになりますけれど,事実ですからやむを得ないとして,とくに女性の特質なのでしようか「物ごとを気にしすぎる」傾向がありはしないかと思います。
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