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つくだにとおしんこ
川田 静男
pp.63
発行日 1961年1月15日
Published Date 1961/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911243
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ある療養所のある病棟で,患者と看護婦との懇談会がひらかれた時,患者側から,つくだにや納豆やおしんこが同じ皿に盛られると味がまずくなるから,皿を分けてほしい,という注文が出た。その時副主任の看護婦が「それは患者さんのぜい沢じやないかしら,私たちの食事だつてそうなのよ,別に気にしないで食べているわ」と答えた。
この答には,いろいろな問題がふくまれている。一つはこの看護婦が,健康者の自分を標準にして病人を判断したことである。終日寝たぎりで食欲のない病人には,つくだにの汁に浸つたおしんこは,どうにも食べられないしろ物であるが,この看護婦は長年勤務していたのに,そのことに気付かなかつた。病人の状態を理解することはなかなか容易な仕事ではないのである。
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