随想
患者は理解されたがっている
川田 静男
pp.72-73
発行日 1961年7月15日
Published Date 1961/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911438
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患者はいつでも理解されたがつている,という意見がある。この意見は患者心理の急所をよくつかんでいるが,患者が理解されたがる,つまり理解を求めるのは,裏からいえば患者が余りにも理解されていないからであり,患者心理の把握が現代医学の—あるいは看護学の—盲点であることを暗示する。
例えば患者が主治医の診断を求めた時,この求めに素直に応じない医者は案外多い。曰く忙しい,曰く患者は医療に口出しすべきでない,曰く病状から見て診断の必要はない,曰く結核は2週間や3週問で変化するものでない等々……。しかし患者が診断を求めるのは,単に体に聴診器を当ててもらいたいからではなく,同時に心の不安を取り除いてもらいたいと願つているのである。患者の訴えのこの二重構造を見ないかぎり,患者と医療看護者の平行線はなかなか解消しない。
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