教養講座 小説の話・34
戦争と取組んだ二人の戦後派作家
原 誠
pp.50-52
発行日 1959年12月15日
Published Date 1959/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910983
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戦爭によつて日本人はみな,異状な,生活体験を味わいました。戦場にかりだされた者,軍需工場に動員された者,家を焼かれた者,原爆にあつた者—戦後,その異状な生活が,小説の素材としてとりあげられたことは云うまでもありません。戦爭を経た作家で,当時の生活体験を書かなかつた人は一人もいないと云つていいでしよう。
「真空地帯」の作者としてよく知られている野間宏は,戦後派作家の一人として,昭和21〜2年頃から文壇に登場してきた人ですが,やはり彼がその作品のなかでとりくんでいたのは,戦爭の問題だつたのです。戦爭によつて痛めつけられた青春の疼き,その傷口,その血を,執拗にさぐりつづけていたのでした。
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