扉
天国への入国資格
pp.1
発行日 1959年10月15日
Published Date 1959/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910935
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「汝等ひるがえりて幼子の如くならずば,天国に入ることあたわず」とは有名な言葉であります。我利私欲を全くもたず,ひたすら純真天真らんまんな子供のような思いにならなくては天国でうけいれてもらえないということなので,キリストが利己主義な人間に訓されたたとえであります。おごらず,てらわず,ひがまず,ただ思うことをそのまま,その時,率直に言つたり行つたりする子供をみていて,しみじみこの教訓の意義を教えさせられます。
親類の4歳になる坊や,どこの男の子もそうであるように,汽車や自動車などの乗物が大好き,一日中でものつていたい位なのです。或晩のこと家内中でテレビをみていた時「台所列車」というのがうつつていました。教育用テーマで,各種の食品が,その原産地から運ばれて,家庭の台所に到達するまでの過程が,一つ一つていねいに説明されているものでありました。子供はまた生きものがすきです。「台所列車」には恰度豚が沢山運ばれていくところがうつりました。その時父親が「坊や,豚の方がよかつたね,毎日汽車にのれるから」といいましたら,坊やは黙つてしばらく画面にくいいるようにみつめていましたが,やがて父親の方をみて,「でも,ボク,貨車はきらいなんだ……」と涼しい顔をして答えました。きいていた大人達は思わず一斉に笑い出しました。貨車とむすびつけることまで大人は考えていなかつたのでした。
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