教養講座 小説の話・30
平林たい子
原 誠
pp.72-75
発行日 1959年6月15日
Published Date 1959/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910880
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ひと口に女流作家といつてもいろいろの人がいますが,不思議なことに,明治30年代生れの女流作家にすぐれた人が多いようです。
具体的に名前をあげると,宮本百合子,宇野千代,林芙美子,平林たい子,佐多稲子,円地文子,網野菊,壺井栄などで,こうならべてみると女流文学者の豪華なところが目白おしにひしめきあつているような感じがします。このなかで宮本百合子,平林たい子,佐多稲子,壷井栄の4人は,プロレタリア文学の発生隆盛とともに文学的生命を起した人たちなので,その後の経緯に多少のちがいはあつても,ひとまずプロレタリア文学系の作家ということができます。他の4人は,どちらかというと政治や社会問題に積極的なかかわりはもたなかつた人たちで,それぞれ,文学的な見解もちがつているでしようが,しかし,同時代の女流作家だという点で,政治的社会的な見解は別として親しくつきあつていたようです。
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