教養講座 小説の話・29
岡本かの子
原 誠
pp.54-57
発行日 1959年5月15日
Published Date 1959/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910854
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今では前衛画家としてよりもラジオやテレビの教養番組のタレントとして,多くの人に知られている岡本太郎は,その青春時代をずつとパリですごした人です。美術学校に入学したのが昭和4年で,その年に父母にともなわれて外遊の長途につき,翌5年からはひとりでパリに留まつて絵の勉強につとめました。以来,親の死に目にもあわずパリ留学をつづけていたのですが,本人もさることながら,父母の身にしてみれば,これは大変なことだつたにちがいありません。
岡本太郎の父親は,岡本一平という漫画家です。明治40年代に世に出た人ですが,当時の漫画というのはいわゆる「ポンチ絵」と呼ばれる低劣卑俗なものでした。一平はそれを脱して漫画の芸術化運動の指導者となり,政治,社会のシンラツな諷刺画を描いて知られ,現代活躍している日本漫画界の重鎮たち多数を,その門下から生みだしました。
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