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『誰も教えてくれなかったスピリチュアルケア』—岡本拓也(著)
石垣 靖子
1
1北海道医療大学
pp.895
発行日 2014年10月15日
Published Date 2014/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414200006
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かけがえのない一人の存在として尊重すること
私たちは誰もが人生の折々にスピリチュアルな苦悩に直面する.患者のスピリチュアルな苦悩に医療者は当然対応すべきものであるが,適切なアプローチがとられず,時には睡眠薬や抗不安薬などで,患者はその苦悩に向き合うことすらできずに最期を迎えることさえある.著者がいうように「スピリチュアルペインは人間にとって成長の痛み」であるにもかかわらず.
本書はスピリチュアルケアについて,丁寧に,丁寧に解きほぐしている.すなわち,「スピリチュアリテイ」,「スピリチュアルケア」,「スピリチュアルペイン」,「スピリチュアルな経験」について,医療の実践家にわかりやすく(時には哲学的表現で)丁寧に説き,「目の前の相手を人格として大切に遇せよ」という結論に導いてくれるのだ.読者は読み進むうちに医療者としての自分自身の原点に立ち返り,「人を大事にする」という姿勢に立脚することが,最も大切なケアであることはもちろん,そのプロセスを通して自分自身の成長につながっているのだと気づいていく.医療・ケアの対象は,かけがえのない存在としての“個”であり,それをどれだけ尊重できるかが,その質に大きく影響することを改めて確認した.
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