教養講座 美術の窓
19世紀の西洋美術(上)
中野 久夫
pp.68-71
発行日 1959年5月15日
Published Date 1959/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910859
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新古典主義 19世紀の絵画の出発点をフランスのルイ・ダヴイツド(1748〜1825)に求めて,話を進めよう。彼を18世紀に含めてしまい,プリユードンあたりから始める立場もあるのであるが—。
バロツクの異名で呼ばれる17世紀のフランス絶対王制の壮大な誇示と,ロココの異名で呼ばれる18世紀の同じ王制の豊麗典雅な手法は,ナポレオンのフランス革命を契期に突然ダヴイツドの冷やかな新古典主義へ受け継がれる。「色彩か形態かという問題は,色彩過剰は感動的な絵画に,形態重視は理性的な絵画につながり,美術史上交互に現われるものである」と既に述べたが,理性的なダヴイツドの画風は,色彩過剰の17,18世紀をとびこえて,ギリシヤ・ローマの古代を幻想し続けたプーサンへ,そしてテーマは直接古代へ,遡つている。
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