講座
腹痛の訴えの看護(Ⅳ)—外科的な場合
千葉 邦子
1
1東京逓信新病院外科
pp.22-25
発行日 1958年11月15日
Published Date 1958/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910727
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外科に限らず一般に腹痛を起す疾患の種類を正しく知るには,腹部臓器の位置,機能をよく理解しておくことが必要です。また,腹部以外の疾患で腹痛を起すものも少なくないため,看護婦は患者の訴えをよく聞く他,患者の一般状態を客観的に観察し正しい判断のもとに臨機の処置,適切な看護を必要とされます。単に腹痛だけの訴えでもその部位や程度及び性質等から非常に多くの種類の疾患を想像することができます。腹痛の発生機転については,脳脊髄知覚神経刺激説,交感神経刺激説,副交感神経刺激説等いろいろの説があり,まだ十分に明らかにされていません。
脳脊髄知覚神経刺激説とは腹部内臓は交感神経や迷走神経にのみ支配されていて,直接脳脊髄神経の支配を受けていないので,腹部内臓には痛覚がないと考えて脳脊髄神経系統の支配下にある腹壁腹膜や腸間膜が疼痛を起すのであるというのです。つまり臓器が病気のため鋭敏になつている腹壁腹膜を刺激し,また胃腸の強直によつては反射的に腹壁が強直を起して腹痛を招くという説です。また,交感神経刺激説とは胃腸の強直なく腸間膜に牽引等の刺激もなくただ胃腸の急激な貧血によつてのみ腹痛を起すことがあり,これは臓器に分布している交感神経が関与しているものであると考えて,臓器内の刺激が交感神経を伝つて上行性に脊髄に達し大脳皮質に伝り知覚中枢を刺激する結果,腹痛を来すというのです。
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