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お腹の訴え(その2)—外科的処置を要する腹痛
中谷 隼男
1
1東京逓信病院外科
pp.45-52
発行日 1954年5月15日
Published Date 1954/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910019
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米国方面から用いられてきた言葉であるが「急性腹症」(acute abdomen,akutes Abdomen)というのがある。それは次のような意味と感ぜられる。即ち一寸診たところ原因が必ずしも明瞭ではないが腹痛を主訴として苦しんでおりなんらかの開腹,外科的処置を要するが如くみえともかくそのままでおく訳にゆかないと考えられる状態のものを指すようである。
実際問題として重篤な腹部疾患を前にした場合,それがいかなる疾患であるかを徒に論じているの余り荏黄として緊急手術の時期を逸するが如きことがあつてはならない。例えばここに汎発性腹膜炎或は腸閉塞の所見を呈するものがあるとする。病変が既に全腹腔に拡つている場合は丁度大火事に遭遇したと同じであつて徒に火元の詮議をしていてもしようがない。又実際不明のことが多かろう。ともかく差当つて消火に努めることが第一のことであることは判り切つたことである。同様に汎発性腹膜炎或は腸閉塞の場合もともかく直ちに『これは即刻手術を要するもの』という判断,決心をつけることが必要であつて,病因がこうであろうか,ああであろうかと議論をもてあそんでいても始まらない。
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