講座
スポーツ医学の話
白石 幸治郎
1
1日発病院外科
pp.64-67
発行日 1958年7月15日
Published Date 1958/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910653
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
スポーツの定義
スポーツが日に日に盛んになつていくのは,まことに目ざましいものがあります。それは昔からいろいろの国の人々にも,老幼,男女を問わず,レクリエーシヨンとして,または身心を鍛える目的でたくさんの人々によつて行われました。今ではそのスポーツを見て楽しむこともますます盛んになつていきつつあります。そこで正しいスポーツを発展させるためにスポーツ医学がどの方向に向わなくてはならないか,そして医学のどのような領域でどういう研究と観察がなされなければならないかということが問題になります。
その前にスポーツの定義とか目的といつたものを考えてみます。一体人間が体を動かして運動するということは1つの本能であると言われます。一方身心を鍛練する目的で一定の身体的運動を行う場合を「体育」と呼ばれます。しかしながらスポーツを行う際には,苦しみもあり,それをやりとげるための強い意志も必要ですし,時には相手に打ち勝ちレコードに挑戦するために激しい訓練をしなくてはなりませんが,やつていてたのしみのないスポーツというものは考えられません。スポーツによつて心身が鍛練されることも間違いはありません。しかしながらスポーツが体育の目的で発生したものではありませんが,たとえ身体を動かし,そうして楽しもうという人間の欲求から出たものであつても,スポーツの結果得られた人間の体や機能が体育の目標と同じものに向わなくてはならないと思います。そうした点からすれば「スポーツは目的を持たない体育」ということができます。
Copyright © 1958, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.