病院のクオレ
第3話 フロントサービスの話
原 素行
1,2
1病院管理研究所
2元 都立広尾病院
pp.53
発行日 1974年3月1日
Published Date 1974/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205296
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新来患者受付
今でも行なわれているらしいが,新来患者が窓口を訪れると,内科ですか,外科ですかと尋ねられる.患者が診療科を選ぶのである.それがよいか?どうかと思われる.多くの場合,患者は素人である.たまに,とくに紹介状を持参する患者は別として.——ところが,病院,とくにお役所病院では,受付子のうちには邪険な人がいないとはいえまい.いや市民から聞かせられる問題である.お世辞は不用であるが,こんな人は患者との間に心の通いあいが必要であろう.ラポールの成立という.学者はむずかしい理論が好きであるから,‘両者の全人格の交流’などと呼んでいる.
昭和20年代の半ば頃,たしか‘生きる’とかいう映画が世間に受けた.ところは区役所の窓口であったという."あちらの窓です"と言われ,次々と窓口を転々として,ついに元の窓口へ戻るという映画であると聞かせられた.作者はまもなく昇天したという噂であった.——窓口子の身になれば,同じことを尋ねられるため,邪険になるのも無理ではあるまいという見方もあるが.
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